住み替えで持ち家から離れる場合や、相続で不動産を取得したときには、「売却」あるいは「賃貸」、「空家」として維持するといった選択肢から選ぶことになります。その中で、賃貸物件として貸し出す場合には、どのようなことに注意をすればよいのか、また、どのような判断を取るのが正しいのか考えてみましょう。
賃貸経営を行うことのメリットとしては、次のようなものがあります。
当たり前のことですが、賃貸経営の一番のメリットは賃料収入です。一旦入居者が決まってしまえば、平均3~5年間は安定した収入を得ることができます。
相続が発生した場合でも、不動産の評価は、土地の場合は路線価方式または倍率方式、建物についても固定資産税評価額で算出するため、一般的に売買される価格(時価)よりも低く抑えることができます。さらに賃貸用の不動産は評価が減額されるため半分以下に抑えられることが多いようです。
まとまった資金が必要になったり、遠方に転居して賃貸経営が難しくなったと感じた時は売却することができます。入居中であってもオーナーチェンジ方式で売却できますので安心です。
一方で、賃貸経営を行うことのリスクとしては、次のようなものが考えられます。
入居者が退去して空室になれば賃料は得ることが出来ません。空室の期間はローンや管理費(マンション)の支払いなどが持ちだしになりますので、長期間にならぬよう、退去の申し出があった場合は早めに不動産会社に相談すると良いでしょう。
建物は経年により劣化が発生します。これを放置しておくと退去や賃料低下の原因になってしまいます。また、万一建物の老朽化などが原因で入居者や通行人に怪我をさせてしまうことがあれば、所有者に損害賠償責任が生じます。給湯機やエアコン等の設備は入居者が持ち込んだものでなければ、故障の際の修理・交換は所有者の負担で行います。建物の修繕や設備の修理・交換費用などは、計画的に蓄えておく必要があります。
物件のある地域の賃貸需要の変動に伴い賃料相場は変動します。また、建物の経年に伴い賃貸物件としての競争力は低下していきます。いずれにしても、現在想定される賃料が将来に渡って得られるものではないということを十分理解しておくことが重要です。
賃料の滞納や騒音による近隣からの苦情など、思いもよらないトラブルが起きることがあります。最悪の場合は入居者に退去してもらうことになりますが、話し合いや場合によっては裁判など、費用・時間・労力を要します。
以上、賃貸経営のリスクについてご説明しましたが、これらの多くは賃貸管理を不動産業者に委託することで軽減することが出来ます。ご不安な場合は是非ご相談ください。
賃貸経営を行うことが決まったら、まずは家賃の目安を立て、賃貸経営にかかる収支を確認・計算してみましょう。貸し出す同じタイプの家の家賃相場がいくらなのか、賃貸情報サイトや近所の不動産会社の相場を参考にしてみることをおすすめします。
次に、賃貸経営の収支について検討してみましょう。賃貸経営をすると家賃収入を得られますが、それに付随して建物や設備の維持費用や税金などの支出が発生することを認識しておくこと大切です。賃貸経営をはじめる前に、収入と支出のバランスがどうなるかを試算し、おおまかな金額の推移を把握しておくことが大切です。
※1… 家賃に含む場合が多い。家賃とは別に受け取ることもあります。(地域によって異なる場合があります)
※2… 家賃の1 ヶ月、2 ヶ月分の場合や、ゼロのケースもあります。
※3… 家賃の1 ヶ月、2 ヶ月分の場合が多い。退去時に入居者に返金するため、収入と分ける必要があります。
※4… 更新後の新家賃1 ヶ月分という例が多い。更新料をなしとする場合もあります。
※5… 自分で管理業務を行う場合は不要になります。不動産管理会社に委託する場合に発生します。家賃の5%程度の会社が多いようですが、管理業務内容や物件種別などによって委託費が異なるのでよく確認をしましょう。
※6… 設備などの故障や、入居者の退去時に発生します。(入居者の故意的な損傷は入居者負担になります)
「大家さん」には、様々な役割や義務が発生します。入居者の募集や契約、物件の維持・管理など、自分ではできない範囲が多い場合には、管理を委託する方法もあります。役割や行うべきことを把握・理解し、どちらの方法で運営していくか考えてみましょう。
大家さんが担う役割としては大きく分けて3つあります。
入居条件を整え、不動産会社などを通じ入居者を募集します。入居後は、家賃の入金確認や入居者からの要望や苦情への対応も行います。また、契約更新の手続き、退去時の対応、契約期間終了前後には、さまざまな手続きや対応が必要になります。
入居者が住みたくなるような物件にすることは、貸主の大きな役割と言えます。安定した賃貸経営には必要不可欠と言っても過言ではありません。入居後、住宅設備に修理や交換が必要になった場合に対応するのも貸主の役割です。入居者の退去時は、故意的な過失によるもの以外の原状回復義務は入居者にはありません。貸主の負担でルームクリーニングや必要であればリフォームをすることになります。
収入(家賃など)と管理・維持費、税金の支出収支から、入居者の更新・退去時の敷金精算やリフォーム費、仲介手数料などを管理する必要があります。賃貸経営で得た所得と、本業の所得を合わせた確定申告や納税手続きも必要です。
“大家さん業”は、本来であれば貸主自身で行うのが理想ですが、本業が多忙な場合や所有物件数が多くて手が回らない場合は、不動産会社や専門家に任せる方が効率良い運営に繋がります。建物や入居者の管理を外部に委託することで、入居者トラブルや設備の故障の際など、不動産会社がスピーディーに対応するため、安心して管理することができ、また、入居者からの信頼も高くなるのではないでしょうか。委託をする場合は、やはりその分の手数料が発生するため、自分ができない範囲のみを任せることも手段のひとつです。