2018.09.21
若い頃は、仕事や子育てが中心で、自分の趣味を楽しむ時間を取ることなんてできなかったなあと振り返るシニアの方も多いのではないでしょうか。当時、世の中は、高度成長期。国や自治体はインフラの礎を築き、また、製造業をはじめ、金融業、通信業、貿易業など、どの業界も繁栄しました。それこそ、シニアの方々は働き盛り、大活躍されていました。
その一方で、世の中や企業のために自分の時間を費やし、ともすると満足に休日が取れず、家族にさびしい想いをさせてしまったご経験もお持ちなのではないでしょうか。家庭や子育てを奥さまに頼ってしまった旦那さま。退職後は、奥さまと仲良く二人の時間を過ごしたいと思っていらっしゃるかもしれません。今回は、そんなシニアのご夫婦が、趣味を楽しむために住み替えされたケースをご紹介します。
都内の一軒家に住むご夫婦。都内近郊から電車で1時間ほどの住宅地にお住まいです。お子さま方は、小学校から高校までは近くの学校に、大学も都内で自宅から通っていました。お二人のお子さまも社会人になって就職し、ご結婚もされ、今は、別の場所で家庭を持たれています。このまま、築50年を過ぎた一軒家に夫婦二人だけで住み続けることも考えましたが、健康なうちに、新しい環境に住み替えてみたいという気持ちが湧いてきました。
住み慣れた家は、おだやかで安心ですが、いつも通りの時間が流れています。同じ環境にいると、「今日はスポーツクラブへいくぞ」とか、「押入れを掃除するぞ」と思っていても、ついつい、昼間に昔のドラマの再放送を見たりして、あっという間に一日が終わってしまいがちです。幸い、貯蓄も年金もあり、生活費も苦労していないので、退職後にせっかくできた貴重な時間に、新しい環境で暮らしはじめてみてもいいかも・・・と、夫婦で話すようになったのです。
「昔から、私たち夫婦は、海のみえるレストランで食事をしたり、海岸を散歩したりすることが好きでした。旅行にいくときなど、海がみえる場所を好んで選んでいました。子どもたちが独立し、主人が退職して、夫婦ふたりだけの暮らしにさらに自由度が増した今、昔からの念願だった、海のみえる場所に住み替えたいという想いをようやく実現できるんじゃないかと思い始めました。
でも、たまに遊びに行くのと、引っ越しをして住むのとでは全く違いますから、まずはどうしたらいいのか、どこに相談したらいいのか、正直、そこからでした」
「いいえ、はっきりとした姿は描けていませんでした。というのも、年に数回、旅行や遊びに行くときぐらいしか海にいきませんでしたから。
それに、海のみえる場所に住むといっても、さまざまな暮らし方がありますよね。窓から海がみえる家で暮らすのか、歩いて海にいける場所なのか、土地から購入するのか、間取りはどうするのか、建売を購入するのか、塩害はどれくらいなのか、交通の便はいいのか、近所に病院はあるのか、田舎なのか、街なのか・・・・。いくら時間が自由になったとしても、夢だけでは、住み替えはできません。まずは、同じような理由で住み替えをされた方の経験談を知ることから始めてみることにしました。
インターネットでいくつか経験談を読んだ後、実際に、話も聞きにいくことにしました。趣味を活かした住み替えをした方々の話を参考にするときにはどんな質問をすればいいのか、海が好きなコミュニティを探して、その中に入ってから不動産を探した方がいいのか、不動産会社にはどんなところから相談できるのか、情報を集めはじめると、これからやることの多さに気付いて、げんなりしてしまったことも事実です。
でも、あきらめてしまったら、このまま毎日同じことを繰り返す日々になるのかと思い・・・、と実際は、最初、そんな感じだったんです」
「夫婦だけで全部考えるのはやめよう・・・というか、できないなと判断してからが早かったですね。目的は、『大好きな海のそばで、趣味を堪能できる暮らしがしたい』と明確なのですから、不動産会社にそのことを伝えて、実際に、同じような目的で住み替えを成功された方々の事例をたくさん見せてもらいました。その中で、自分たちの理想の暮らしをしているご夫婦のやり方を見つけて、真似をしようと思いました。
それと、子供たちにも、今の状況を伝えて、私たち夫婦のこれからの暮らし方を知っておいてもらおうと思いました。私たち夫婦で建てたわが家ではありますが、子どもたちにとっても、自分たちが生まれ育った実家ですから、いきなり無くすとなると思い出が無くなってしまい寂しい思いもするでしょう。将来の相続のこともありますしね。
ただし、なるべく堅苦しくならないように、まずは、みんなで食事でもしようと、孫も誘って、食事会をひらいたんです。そこで、海の近くに住んで、趣味を楽しむ住み替えの計画を話すと、「えーっ!すごく楽しそう!」とか、「遊びにいくよ!」とか、「いいなー、僕も住みたいなあ」とか、笑。みんなが大賛成してくれて、なんだかうれしかったですね。
主人としては、仕事が忙しくて、なかなか子育てに協力できなくて、今は、イクメンとして毎週末、子どもと奥さんとドライブにでかけている息子から、いやみのひとつでも言われるかと思い内心ひやひやしていたらしいのですが、「じゃあ、お父さんと息子と僕で、いつでも海釣りにもいけるね!」といわれたときには、ちょっとほろっときていたみたいです。
子どもたちが帰った後に、「相談して良かったわね。お父さん、ちょっと泣きそうになってたじゃない」というと、照れくさそうにしていました。次の日から、本腰を入れて住み替えに取り組むようになって頼もしかったです」
「子どもたちに相談してからは、早かったですね。だったら、子どもや孫が泊まりにきてもいいように、扉を開け離すと広間にできる場所を間取りに取り入れたり、Wi-Fiも設置したり、小さいですが、庭にバーベキューコンロやベンチも置きたいと、具体的に進みました。
最初は、手入れが楽なマンションにしようと思っていたのですが、最終的に、庭付きの平屋一軒家に住み替えることにしました。今の一軒家に植えてあった樹木も、できるだけ植え替えをして、今の雰囲気も残しつつ、ランチやお茶ができるようなベンチも作りました。
海の近くなので、何年かごとの塩害予防のペンキの塗り替え費用も予算として残しています。外にいる時間が多くなるので、アウトドア用品店でカーフ(ビニール製の屋根)を購入し、海外のコテージのような雰囲気にしています。孫が遊びにきたときは、ランプを付けて夕食をそこで食べるととても喜ぶんです。
朝、2人で浜辺を散歩するのが何よりの楽しみです。新鮮な魚や野菜を買ってきて、昼間に食べる。服装は、Tシャツと短パン、麦わら帽子。ちょっとしたリゾートに住んでいる気分です」
「永年住んだ家からの住み替えは、荷物の整理が大変でした。残して置くモノ、捨てるものと分けるのは、思ったより時間がかかるので、毎日、すこしずつ、長い時間をかけてやると身体への負担が減ります。私たちは、悩んだものは、思い切って新しい住まいに持ってきました。新しい住まいで、いるものいらないものの取捨選択を続けています。
そのうち、新しい暮らしの中で、新しい人間関係もでき、自然と選択基準も変化します。そのとき、また考えればいいと思っていたからです。こちらに来たら、あんなに悩んでいたものを自然と手放すことができて驚きましたし、さらに新しく増えた荷物も多い、笑。
楽しいことはたくさんありますから、まずは、プロの不動産専門家に相談をして、住み替え方法、資金、スケジュールなど、基本となる事項を片付けておくことが大切だと思います」
(まとめ)
ご家族の応援をうけて、住み替えスピードがUPされたご夫婦。目的を共有する人が増えることで、悩みが具体化し、解決方法も明確になるからかもしれません。理想の生活環境へ、まずは一歩踏み出すこと、そこに新しい暮らしが待っています。