2019.11.25
平成30年(2018年)7月、約40年ぶりに「相続法」が改正され、平成31年(2019年)1月13日から令和2年(2020年)にかけて、段階的に施行されることになりました。
今回の主な改正点は、残された配偶者が安心して安定した生活を過ごすための新たな方策などが導入されたことです。自分が亡くなったとき、あるいは家族が亡くなったときに生ずる相続の改正ポイントを理解し、家族で話し合う際などに役立てましょう。
「相続」に関するトラブルを防ぐため、「民法」では、誰が相続人で、何が遺産で、被相続人の権利義務がどう受け継がれるかなど、「相続」の基本ルールが定められています。
「相続法」とは、「民法」の「相続」について規定した部分のことをいいます。昭和55年(1980年)に改正された後、高齢化や社会環境の変化に対応するため、平成30年(2018年)、約40年ぶりに大きく見直されました。
今回の「相続税」の主な改正点は下記です。
(1)「配偶者居住権」を創設
(2)「配偶者短期居住権」も認められるようになりました
(3)自宅の生前贈与が特別受益の対象外になりました
(1)「配偶者居住権」を創設
「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合、終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利です。建物についての権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分けることで、遺産分割の際などに、配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することができます。「配偶者居住権」は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは異なり、人に売ったり、自由に貸したりすることができない分、評価額を低く抑えることができます。このため、配偶者は自宅に住み続けながら、預貯金など、他の財産を改正前よりも多く取得でき、配偶者のその後の生活の安定を図ることができます。
(2)「配偶者短期居住権」も認められるようになりました
「配偶者短期居住権」とは、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に居住していた場合に、遺産の分割がされるまでの一定期間、その建物に無償で住み続けることができる権利です。「配偶者短期居住権」は、被相続人の意思などに関係なく、相続開始時から発生し、原則として、遺産分割により自宅を誰が相続するかが確定した日(その日が相続開始時から6か月を経過する日より前に到来するときには、相続開始時から6か月を経過する日)まで、配偶者はその建物に住むことができます。また、自宅が遺言により第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合には、その建物の所有者が権利の消滅の申入れをした日から6か月を経過する日まで、配偶者はその建物に住むことができます。
(3)自宅の生前贈与が特別受益の対象外になりました
結婚期間が20年以上の夫婦で、配偶者に対して自宅の遺贈または贈与がされた場合は、遺産の先渡し(特別受益)として取り扱う必要がないと改正されました。改正前は、被相続人が生前、配偶者に自宅を贈与すると、自宅は遺産の先渡しとし、配偶者が遺産分割で受け取る財産の総額がその分減らされました。そのため、せっかく被相続人が、配偶者が生活に困らないための生前贈与をしても、配偶者が受け取る財産総額は、生前贈与をしないときと変わりませんでした。今回の改正では、自宅の生前贈与を受けた場合、配偶者は結果的により多くの相続財産を得て、生活を安定させることができるようになりました。
(1)「自筆証書遺言」に添付する財産目録の作成がパソコンで可能になりました。
改正前は、「自筆証書遺言」は、添付する目録も含め、全文を自書作成する必要がありました。改正後は、遺言書に添付する相続財産の目録は、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなども添付して「自筆証書遺言」を作成することができるようになりました。
(2)法務局で自筆証書による遺言書が保管できるようになりました。
自筆証書による遺言書は自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても、紛失したり、捨てられたり、書き換えられるおそれがあるなどの問題がありました。改正後は、こうした問題による相続をめぐる紛争を防止し、「自筆証書遺言」を利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されました。
(1)被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能になりました。
実際に、被相続人の介護や看病をしていたのは、相続人ではない親族(例えば、子どもの配偶者など)だった場合でも、改正前は、遺産の分配をされず、不公平だとの指摘も少なくありませんでした。改正後は、こうした不公平を解消するため、相続人ではない親族も、無償で被相続人の介護や看病に貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合、相続人に対し、金銭の請求ができるようになりました。
(2)遺産の分割前に被相続人名義の預貯金を一部払戻し、葬儀などの一時金にあてることが可能になりました。
改正前は、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済など、お金が必要になった場合も、相続人は遺産分割が終了するまでは被相続人の預貯金の払戻しができませんでした。改正後は、こうした相続人の資金需要に対応できるよう、遺産分割前に預貯金債権のうち一定額については、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関で払戻しができるようになりました。
平成31年(2019年)1月13日から、段階的に施行されます。詳細については、法務省、または関連機関への問い合わせ、またはホームページなどを参照し、それぞれの施行日を間違えないよう注意しましょう。
・「自筆証書遺言」の方式を緩和する方策など
平成31年(2019年)1月13日から
・原則的な施行期日(遺産分割前の預貯金制度の見直しなど)
令和元年(2019年)7月1日から
・「配偶者居住権」及び「配偶者短期居住権」の新設など
令和2年(2020年)4月1日から
・法務局における「自筆証書遺言」に係る遺言書の保管制度など
令和2年(2020年)7月10日から
今回の「相続法」改正では、時代に合わせたさまざまな案件が取り入れられています。改正前と改正後の相続内容の変化を確認し、安心して相続できるよう、日頃から家族で準備をしておくことをおすすめいたします。