2018.07.09
シニアの方が、今後の暮らしを考える選択肢のひとつに、お子さんやお孫さんとの同居があります。お子さんが独身時代に一緒に暮らしていた家族生活と、独立して家庭を持ってから一緒に住むのとでは、考え方や住まい方が違うのは当然です。お孫さんも一緒に住むとなると、生活時間やスタイルも夫婦二人のときとは全く違う時間感覚が必要になってくるでしょう。自宅の建て替え資金など、問題は山積みです。どんなことを考えておく必要があるでしょうか。
今回は、一戸建てに住んでいるご夫婦が、三世代同居をされたケースをご紹介します。都内ある先祖から受け継いだ土地で一戸建てに住んでいましたが、この先のことを考え、住まい方を検討されていました。健康のことを考え、最初は、一戸建てを売却し、暮しやすいマンションへ移り住むことも考えていらっしゃいましたが、今は巣立ってしまったお子さんたちと住んでいた場所に愛着がありました。また、お子さん夫婦が共働きのため、一緒に住むことで、孫の送り迎えのサポートや親が不在中の安全も考え、三世代同居の住み替えを検討することになりました。
「独身の子どもと一緒に住んでいたときと、結婚して家族を持った子どもと住むのは勝手が違うと思っていました。プライベートな空間や生活時間は、お互いストレスを感じないように確保できるのだろうか?今住んでいる一戸建てを、どのように建て替えすれば、三世代同居できるのだろうか?建て替え資金はどれくらいかかり、親子でローンをどのように組めばいいのか?など、すべてが不安でした」
「将来のことを、真剣に考えたからです。暮らしやすさだけで新しい場所でマンションに住み替えたとしても、10年、20年後はどこかが病気になったり、夫婦のどちらかが亡くなったりして、悲しいですが高齢の一人暮らしになるのはどうしても避けられないことです。今は、年齢の割には元気にしているのですが、この先ずっとそうかどうかは誰にも分かりません。
また、住み慣れたこの場所には、気心の知れたご近所さんも多く、買い物をするスーパーや趣味の体操教室やコーラスサークルなど、心地良く、おだやかな暮らしがあります。そんな場所を離れて、人間関係を最初から作らなくてはならないことも不安でした。
それらをひとつひとつ、順番に、整理していく中で、ご近所との付き合いはそのままに、住み慣れた街で、生活同線を考えた、住みやすい新築で、今風のインテリアに囲まれて住む方が私たち夫婦には合っているのではないかと考えたのです。それに何より、孫の成長を、こんなに近くで感じることができる・・・、この幸せは何物にも代えられないのではないかと」
「建て替えのために必要なこと(荷物の整理、建築中の仮住まい)など、土地はあるといっても、検討しなければいけない課題は山積みでした。また、子どもたちは、別の場所でマンションを購入して住んでいたので、そこを売却して移り住むのか、賃貸にして、家賃収入を得ながら資産として残しておくのかなども相談しました。孫の学校を転校させるのか、学区に関係なく通える私立を受験するのかなども話題になりました。問題となることを全て書き出して一覧表にして、学校や会社から資料を取り寄せたり、一緒に専門家に相談にいきました」
「ひと昔前だと、三世代同居というと、おしゅうとさんやおしゅうとめさん、お嫁さんが、お互いに気を使ってぎくしゃくしたり、その間にはいった息子さんも大変で・・・という話も多かったと思いますが、時代も変わり、今は、私たち高齢者夫婦も気持ちが若い!体力もありますし、暮らしの楽しみ方も知っていますし、不動産の専門家や建築家の方から、同居ストレスを感じにくい間取りを提案して頂きました。
また、孫との関係も、祖父や祖母として孫の世話をするだけでなく、孫の方から、スマホの使い方や新しい情報を教えてもらえるので、脳も活性化して、気持ちも若返っているのを感じます。夫婦二人のときは、ワンパターンになりがちな料理も、孫のことを考えると肉や魚を多めにしたり、「美味しいね!」と喜んでくれるのがうれしくて、新しいレシピにも挑戦してるんですよ。カフェ風の盛り付けも、ちょっとしたもんです。
それに、ウィークディは、子どもたちは仕事、孫も勉強があるので、最初に思っていたよりも生活スタイルに変化は無く、毎日同じでした。昼間は、学校や会社で子ども家族が外出しているので、夫婦二人のランチタイムを気持ちのいいベランダで楽しんだり、映画を見に行ったり自由に過ごしています。キッチンやお風呂場が新しくなって気分がいいし、床の掃除は、お掃除ロボットがやってくれるので、実は、もっと早く一緒に住んでいればラクだったねって、話しているんですよ」
「同居をする前に、しっかりと話し合うことが大事です。疑問や悩みを抱えたまま同居すると、後で解決方法を考えなくてはならなくなります。二度手間だと、解決する時間も費用も増えてしまいます。それと、お金のことは、相続や贈与など税金にも関係してくるので、不動産の専門家に必ず相談されることをおすすめします。相続税については、いつかは必ず話さなくてはいけないことです。法律を学びながら、自分たち家族にあった準備をしておく良いタイミングと考えるといいのではないでしょうか」
シニアが将来を考えるときに必須の「健康」と「相続」。三世代同居は、そういったことを家族で相談する良い機会でもあります。そして、新しい住まいで、便利な家電を使いながら、孫とともに笑顔で暮らす幸せ。新しい三世代同居ストーリーが、はじまっています。