住み替えは、人生をさらに充実させるための選択肢の一つ。シニア世代ではどのような住まいを選べばいいのでしょうか。
老後を過ごすことになる住み替え先。シニア世代の住み替えでは、新たにどのような住まいを選んでいるのでしょうか。
不動産ポータルサイトのSUUMOが、持ち家からの住み替えを実行した50歳以上の103名(男性73名・女性30名、平均年齢63.4歳)にアンケート調査を実施したところ、6割近くの人が新たな住み替え先としてマンションを選んでいることがわかりました。
住み替え前の住まいは、マンション:一戸建てが4:6だったのに対し、住み替え後は6:4となり、逆転する結果に。これまでは一戸建てで暮らしてきたけれど、マンションに移ったという人も多いと考えられます。
なぜ老後の住み替え先として、マンションが人気なのでしょうか。さまざまな理由が考えられますが、マンションのほうが「シニアライフならではの問題」を解決しやすいことも大きな理由の一つと言えそうです。
まずバリアフリーの問題。加齢とともに足腰が衰えたり、病気になったりする可能性が高まります。そうなったときに安全に暮らすには、床の段差を少なくする、廊下などは車椅子が通れるくらいのスペースを確保する、手すりを設置するといったバリアフリー対応が欠かせません。
しかし一般的な一戸建て住宅をバリアフリーにするのは大変なこと。既設の一戸建てや建売では、しっかりバリアフリー仕様がなされた住宅は少ないというのが実情でしょう。とはいえバリアフリーの注文住宅を建てようとすれば、予算が跳ね上がります。
一方、マンションはバリアフリー仕様になっている物件が少なくありません。一戸建てとは違って、専有部分の室内は、階段の上がり降りをすることなく移動ができます。また長く居住することやシニアの需要を見込んで、部屋と部屋の間、あるいは部屋と廊下の間に段差をなくすなど杖や車いすでも移動しやすく、浴室やトイレに手すりを設置するなど、バリアフリー仕様の物件が増えています。
近年はさまざまな間取りが用意されているので、移動や掃除がしやすいように、部屋がこま切れになっていないワンフロアの間取りを選ぶことも可能です。
専有部分に加え、エントランスやエレベーターといった共有部分もバリアフリー対応がなされている物件であれば、快適に安心して暮らすことができるでしょう。
また、バリアフリー設計がなされ、スタッフが常駐し、食事サービスや家事サービスなどを付随しているシニア向けマンションも登場しています。
シニア世代ではバリアフリーだけでなく、「セキュリティ対策」も住まい選びの重要なポイントです。出入り口や窓が多い一戸建ては、戸締りが大変。加齢で体が思うように動かなくなれば、これまでは難なくこなせていた雨戸の開け閉めもおっくうになりがちです。
マンションであれば、通常出入り口は一つで窓の数も限られていますし、多くの物件がオートロックで住民以外の出入りが制限されているため、防犯面のストレスをかなり軽減することができます。ご近所との距離が近く、エントランスや廊下などで住人と顔を合わせる機会も多いので、 なにかと安心です。
さらに民間の警備会社のセキュリティシステムを導入する物件も増えていて、センサーが侵入者を感知した時などは警備員が駆け付けるなどの対応をしてもらえます。そのぶん費用がかかるとはいえ、シニアにとって心強いシステムと言えるでしょう。
一戸建ても、家庭菜園を楽しめる、上下の騒音を気にせずに過ごせるといったメリットがあります。しかしかつて子供と暮らしていた時に感じていた「騒いでも気を使わなくて済む」「遊べる庭がある」といったメリットがなくなり、マンションのメリットをより強く実感するようになった――というシニアは少なくないようです。
住み替えを考える際、現在の家をどうするかという課題が必ず生じます。売却が上手くいけば懸念することはありませんが、立地や条件によってはなかなか上手くいかないことも少なくありません。売却以外の方法で考えることが可能な場合、子世帯に戸建てを譲り、自分たちはそこから近い予算に合う駅近でコンパクトな住宅へ住み替えるというのも有効な手段のひとつです。
国土交通省住宅局「平成25年 住生活総合調査(速報集計)結果」図57 参照
理想の家族の住まい方に関する内閣府実施の調査によると、全体の31.8%が「親との近居」、20.6%が「親との同居」と回答しています。近年では、同居よりも近居が望まれる傾向にあるため、子世代への相談余地が十分にあるのではないでしょうか。
また、住み替え先の住宅立地がなぜ駅近が良いかというと、その先、自分たちが要介護になりその家に住めなくなったとしても、便利なところであれば借り手がつくので、賃貸として活用ができる可能性が高いからです。
子どものいない世帯の場合、医療・介護施設、買い物施設などが充実した立地の住宅を選択することが必須となってきます。将来的には、他人の介護を必要とする可能性が高いため、高齢者施設の利用を視野に入れて考えてみるのが良いでしょう。
高齢者施設でも、50代の元気な状態でも入居できる施設がありますので、気の合う友人と一緒に入居をして、快適な暮らしを送っているという例もあります。
施設によっては見学会や体験入居などを実施しているので、実際の住み心地を確認して選んでみてはいかがでしょうか。
参考:
高齢者向け住宅の種類