意外にも春は火災が最も発生しやすい季節。理由は、空気の乾燥に加えて強風が増えることにあります。今回は近年増加中の知らずにいると怖い電気関係の火災の原因「トラッキング現象」を中心に、住まいの火災予防の盲点と重要ポイントについてご紹介します。
電源プラグがゆるみ、ホコリが溜まっていたら注意!
ここ最近、住宅火災が再増加しています。特に注意喚起されているのが電気や電気製品にかかわる火災です。東京消防庁管内だけでも、令和5年は過去10年間で最多の377件が発生しています。主な原因は「電線のショート」「金属の接触部の加熱」「トラッキング」最後の「トラッキング」とは、コンセントに長時間差し込んだままのプラグとコンセントの間に溜まったチリやホコリが、湿気を帯びて電気を通しやすい状態になり(電気の通り道=「トラック」ができる)、放電による火花が発生して出火する現象のことです。
ただし、コンセント周りにホコリが溜まっているだけでは、トラッキング現象は起きません。問題は、長年の利用などによる電源プラグのゆるみ。ずっとコンセントに電源プラグを挿しっぱなしにして、差し込みが甘くなっているところはありませんか?プラグとコンセントの差し込みに隙間ができていて、そこにホコリが溜まっていたら危険!すぐにホコリを除去してゆるみを直しましょう。トラッキング現象は、ホコリと湿気があれば、季節に関係なくいつでも起こりえるのです。
湿気とホコリが多い場所のコンセントをチェック
住まいの中でトラッキング現象が起きやすいのは次のような場所です。
●冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジなどの家電製品の裏側のホコリが溜まりやすいところのコンセント
●キッチン、洗面所、脱衣所など湿気の多い場所で使用しているコンセント
●加湿器や水槽など水気のある場所で使用しているコンセント
●窓のまわり、北側外壁に接する部分など結露しやすい場所にあるコンセント
ゆるみを助長するタコ足は、やっぱり危険!
よく「タコ足配線はNG!」と言われるのは、コンセントの数の分だけ電源プラグとの接数が増えて、さらにコンセントの重みで緩みやすくなるから。その結果、隙間にホコリが溜まりやすくなり、トラッキング現象発生の確率がぐんと高まってしまうのです。またタコ足配線で、電源コンセントのワット数の上限を超えて電気を使用してしまうと、電源タップのコードが発熱・発火してしまうことも。くれぐれも、消費電力が大きい家電製品は、コンセントに直接差し込んで利用するようにしましょう。
不使用の電源プラグを外しておくと省エネに
トラッキング現象を防ぐには、とにかくプラグにホコリを溜めないことです。普段使用しない電化製品のプラグはコンセントから外しておきましょう。チリやホコリ対策になるだけでなく、省エネにもなります。
トラッキング防止カバーなど便利アイテムも
利用していないコンセントは、できれば専用のカバー(キャップ)で覆っておくと良いでしょう。市販のトラッキング現象防止機能が付いた電源プラグ、トラッキング防止カバー、プラグ安全カバーを利用するのも手です。赤ちゃんや小さな子どものコンセントへのいたずらによる事故防止にもなります。
トラッキング現象の発生や、タコ足配線などによる異常な過熱の発生をブザーとランプで知らせてくれる便利なコンセントもあります。自動的に電気を遮断(ストップ)してくれますから、設置しておくとより安全性が高まります。※工事は電気店にご相談ください。
使用済み乾電池は、両端にテープを貼って保管
もう一つ、身近で見過ごしがちな火災の原因があります。それが、「使用済み乾電池」。使い終わった乾電池にはわずかに電気が残っています。そのまま放置しておくと、電池同士や金属等に触れた時に発熱して火事の原因に。乾電池を使い終わったら、両端にテープ(セロテープやガムテープなど)を貼って、自治体の回収日まで保管しましょう。
火災予防で大切なのは、やはり日頃の危機意識。この機会にコンセントや電気製品のコードなどが家具等の下敷きになっていないか、接続部が緩んだり折れ曲がったりしていないか、ホコリが溜まっていないか入念にチェックしましょう。チリやホコリがあれば速やかに取り除く習慣を!電源プラグを抜く前に本体のスイッチを切ることをお忘れなく。