室内の照明が、実は人の生活リズムや心身の健康にも密接に関わっている!? しかもその影響は、年を重ねるにつれより大きくなっていきます。今回は照明がもつ住まいを健康空間にするためのとても重要な役割と、その最適な調整法についてご紹介します。
人体のリズムを司る太陽光、照明は室内の太陽
住まいの光が人体に及ぼす影響は、決して小さくありません。照明の明るさや色は、睡眠の質に関係したり、気分の落ち込みや体調不良を引き起こしたりすることもあります。それは、人体の繊細なリズムが太陽光にリンクしているためです。体内時計のリセットには、1500~2500ルクスの明るさが必要だと言われています。朝の起床後、カーテンを開けて自然光を取り入れると、太陽光に含まれるブルーライトによって覚醒スイッチが入ります。精神安定に不可欠なセロトニンの分泌も活発になります。曇りや雨の日は、カーテンを開けたら室内の照明を点けて、明るさを補う必要があります。照明には私たちが室内で過ごすために必要な光の量を太陽に代わって提供、あるいは不足分を補完するという役割もあります。照明はいわば住まいの中の太陽なのです。
照明は、太陽の動き・明るさ・色をイメージ
室内の照明の位置や色も、太陽をイメージしながら考えてみましょう。たとえば、昼間の太陽は、真上から照らす明るい色。夕方~夜は、低い位置から照らすオレンジ色です。私たちの体は、この夕日のようなオレンジ色の明かりが斜めから当たるとリラックスして、メラトニンの分泌も促進され、眠りへの準備もスムーズに始まります。逆に就寝前に、明るい真上からの天井光を点けると、眠りの準備に入るところに昼間の太陽を浴びているのと同じ状態に。そのため就寝1~2時間前は、暗めのオレンジ色の光で過ごすことが推奨されています。
朝や昼間は白い照明、夜はオレンジ色に
夜は寝室だけでなくリビングやダイニングも、オレンジ色のやさしい光にするのがおススメ。心身ともにリラックスできるだけでなく、テーブルを囲む人の顔色をきれいに、料理もおいしそうに見せてくれます。一方、仕事や勉強をする場合は、蛍光灯のような青味がかった光(昼光色:ちゅうこうしょく)のほうがベター。文字が見やすく昼間のように集中できます。
年齢と共に、より多くの明るさが必要に
年齢によっても、最適な照明の明るさは変わってきます。人は年を重ねるにつれ、明るさに対する反応が鈍くなるからです。たとえば60代の人が20代の時と同じ明るさを感じるためには、約3.2倍の明るさが、新聞を読むなど細かな作業をするときには通常の約1.5~2倍の明るさが必要だと言われています。年齢の違う家族と同居している場合、利用する人や時間帯に合わせて、明るさを上手に調節しましょう。
LEDライトは紫外線もチラつきも少ない
近年、急速に普及してきたLEDライトは、白熱電球や蛍光灯に比べて消費電力が少なく、光熱費を抑えられることに加え、蛍光灯に比べて3~6倍も長持ちします。その上、LEDの光は紫外線を放出しないので壁などの展示物が劣化するのを防ぎ、ほとんど虫を寄せ付けません。また長時間さらされると、体のだるさ、目の疲れ、頭痛などの不調が起こる可能性が高くなるフリッカー現象(照明器具やディスプレイの細かいチラつき)が起こりにくいという、うれしいメリットもあります。
簡単・裏技お手入れで、省エネ効果も
面倒で忘れてしまいがちな照明器具のお手入れ。たとえば1年間お掃除せずに放置した場合、どうなる…? なんと約20~40%も明るさが低下!ムダな電力も消費してしまいます。そこで一度やっておくとその後のお手入れが格段にラクになる、ちょっとした裏技をご紹介しましょう。洗濯用の柔軟仕上げ剤を少しだけ水に入れます。そこに布を浸し、固く絞って拭くと、静電気の発生を防いでホコリがつきにくくなります。お気に入りの香りの柔軟剤を使えば、室内がいい香りで満たされて一石二鳥。ヘアケア用のコンディショナーやリンスでも代用できます。お手入れの際には、くれぐれも電源をオフにすることを忘れずに。
照明は「見る」ことを助ける器具であり住まいのインテリア。そして人の健康を左右する重要なアイテムでもあります。住まいの照明を健康管理に賢く活用して体調を整え、充実の秋を過ごしましょう。