寝苦しい夏。眠りが浅くなって朝起きると身体がだるい…。原因は、人の身体のしくみに沿った体温調節ができていないこと。今回は、熱中症を防いでぐっすり眠るための、室温・寝巻・寝具の3つのバランスでつくる、熱帯夜の快眠環境についてご紹介します。
私たちの身体は、体温が下がることによって次第に眠くなり、体温の上昇と共に目が覚めるようにできています。ところが夏は就寝時間になってもスムーズに体温が下がりません。一方、身体が目覚めの準備に入ってもエアコンの冷気によって体温の上昇が妨げられ、寝覚めの悪さや強い眠気が残るなどの不調を招きやすいのです。
まず、エアコンで熱を逃がす
私たちは寝ている間、脳が休息する「ノンレム睡眠」と脳が活動している「レム睡眠」を90分周期で繰り返しています。「ノンレム睡眠」が最も深くなるのが寝入ってからの約3時間。「ノンレム睡眠」中は体温調整がうまく働きませんから、この入眠からの3時間を快適な環境(「室温:26〜28度、湿度:50~60%」)に整えることが睡眠の質を決めるカギなのです! 室温が29℃を超えてしまうと、寝具やパジャマの工夫をしても寝苦しさの解消が難しくなります。また、熱中症の約4割が夜間に発症するとか。まずは、エアコンを使って室温を下げましょう。特に、熱帯夜の場合は就寝中のエアコンのつけっぱなしが推奨されています。「でも、それだと身体がだるくなる」という原因は、冷えすぎです。ポイントは「熱を逃がしたら、冷やし過ぎない」こと。眠りに就く30分~1時間前から寝室を「26℃」に冷やしておき、眠る際に「28℃」に設定、扇風機やサーキュレーターでエアコンの風を拡散させるのがおススメです。冷やしすぎを防ぎながら睡眠に快適な室温をコントロールできます。この時、温度計などで実際の室温表示を確認しましょう。
寝巻と寝具で冷やしすぎを防ぐ
エアコンによる冷やし過ぎを防いで体温調節に役立ってくれる大切なアイテムが、寝巻と寝具です。
①寝巻の素材は、綿×ガーゼがおススメ
夏の寝巻の役割は、寝巻内の温度と湿度を身体にとって快適な状態に保つことにあります。寝汗が体の表面についたままだと不快に感じて眠りが浅くなってしまいがち。さらに、汗が蒸発する時に体温が一気に奪われ、寝冷えにもつながります。寝巻に最適な素材は、吸水性と吸湿性に優れた綿と、通気性と速乾性に優れたガーゼ素材の組み合わせです。ガーゼは放湿性と通気性に優れており、綿は繊維がリネンよりもしなやか。寝巻と皮膚の間の環境を快適に保つことができます。
②寝巻は夏でも長袖がイイ
エアコンで体を冷やしすぎないよう、特にひじやひざなどの関節を冷やさないように夏でもパジャマなどの寝巻は長袖がおススメです。特にホルモンバランスによって自律神経が乱れやすい女性は、長袖長ズボンがベター。関節は自由に動かせる分、皮下脂肪や筋肉が薄くなっています。冷やされた血液が全身を巡ると、体全体の冷えにつながってしまいます。できるだけ袖口や裾廻りのゆったりした、前開きタイプなどのように通気性がよいものを選ぶと良いでしょう。
③寝具は身体の下に敷くものこそ重要
眠ってしまうと動かせない身体の下に敷く寝具の素材も、夏の快眠の大切なポイント。最近は「冷感」「涼感」をうたったものが販売されていますが、実は品質基準が定められていません。選ぶならば、寝巻同様「通気性」、「吸水性」、「透湿性」の高い綿ガーゼや麻などの天然素材が良いでしょう。敷布団とマットレスを重ねて使用している場合は、一方を外して厚みを減らすと、熱が逃げやすくなります。また、低反発素材マットより硬めの素材のほうが身体に密着せず涼しく感じます。ベッドの場合、マットレスの上に硬めのベッドパッドを敷くと涼しさを感じやすくなりますよ。
寝具の位置や照明にも工夫を
意外と盲点になっているのが、眠る時の位置です。たとえば、ベッドの配置が窓側のケース。その上道路に面している場合は、音も快眠を妨げてしまいます。できれば寝る時は頭側を窓のない内壁に。外との温度差が無くなって、寝心地が各段に上がります。また、照明の色も快眠環境に影響します。やわらかな雰囲気の電球色、壁や天井、シェードなどによって拡散された柔らかく優しい間接照明のほうが、睡眠前の時間をリラックスして過ごすことができます。暑い夏は、なかなか寝付けず夜更かししがちです。寝室に、ヒノキやラベンダーなど鎮静作用のある香りをプラスしてみるのもいいかも。快眠は美肌も育てます。寝室の睡眠環境を見直して熱帯夜を乗り切りましょう。