なかなか遠出することが難しい昨今ですが、散歩であればいつでも気軽に行え、ストレス解消はもちろん健康維持にもつながります。今回は、ご近所での散歩を続けるコツや安全・安心に楽しむための注意点などをご紹介します。
ウォーキングにはない五感を刺激する楽しみ
「散歩」に近い言葉として「ウォーキング」があります。ウォーキングの場合、気分転換もできますが、どちらかというと健康の維持・増強を目的とした有酸素運動や足腰の鍛錬というニュアンスが強いもの。それに対して散歩は、歩くことで運動にもなり、ストレス解消に加え五感が刺激されて脳にも良い作用を与え、認知症防止にも効果があると言われています。その「五感を刺激する」という点が非常に大事です。ひたすら歩き続けるのではなく、美しい風景と出会ったら立ち止まって鑑賞するのもよいでしょう。お気に入りのカフェでコーヒーやスイーツを味わうといったことも、ウォーキングにはない楽しみです。有名な歴史上の人物にも散歩好きと言われる人たちはたくさんいます。古くはソクラテス、プラトン、アリストテレスをはじめ、ベートーヴェン、哲学者のカントやルソー、現代ではスティーブ・ジョブズなども散歩をこよなく愛したとのことです。その顔ぶれからも、散歩が知性や感性を養うのに適していることがうかがえます。
同じ道を歩いても目の付け所を変えてみる
おそらく多くの人が「近所の散歩など数日で飽きてしまうだろう」と考えると思います。すぐそばにあるのに意外と足を踏み入れたことのない狭い路地などはたくさんあっても、確かに毎日出かけていると「未到の道」はたちまちなくなってしまうことでしょう。しかし、同じ道でも季節や時刻、あるいは天候によって、違う印象を受けることがあります。いつしか道端に野花が咲き、木々には深々とした緑の葉が生い茂るなど、数日前には気づかなかった光景に季節の移ろいを感じることがあります。空に浮かぶ雲の形も毎日同じではありません。商店街を歩けば、いろいろなお店の前にディスプレイされた商品も少しずつ変わっていきます。洋服はもちろん、生花、果物、菓子、野菜、魚など、旬の彩りを見つけたら嬉しい気分になれるかも。大切なことは、「気づき」や「発見」を意識して行うこと。そのためには、まっすぐ前を見て歩くだけでなく、少し目線を上げたり下げたり、左右を確認したりして、気になるものがあったら指差ししてみましょう。「こんなレトロな看板があったんだ」とか「この大木、樹齢何年くらいかな」とか、今まで気づかなったこと、興味がなかったものに意識を向けると、散歩の時間が豊かになるはず。心に刺さった光景があればスマートフォンで撮影するのもよいでしょう。また、「今日この路地を通るのは自分が何人目かな」などとイマジネーションを働かせるのも面白いです。
お出かけ前には準備もしっかりと
ランニングやウォーキングなら靴にこだわりますが、ゆっくり近所を散歩するために高価な靴を買う人は少ないかもしれません。しかし、毎日歩けば結構な距離になるので、散歩用といえども足への負担を軽減するように設計されたものを履くべきでしょう。靴を選ぶ際、自分の足のサイズに合ったものを試着するのが普通ですが、座ったまま片足だけ履いてみて決めてしまってはいないでしょうか。その方法ではふさわしい靴かどうかはわかりません。できれば両足とも履いて店内を歩いてみましょう。それで本当に自分の足に合っているか、歩きやすいかをチェックします。また、近所を散歩する前に準備運動をする人は少数派だと思いますが、やはり歩行中の怪我を防ぐためにも軽いストレッチ運動を行うことをオススメします。ほんの2~3分だけでよいので、膝の屈伸や筋を伸ばすことに時間をかけてからお出かけください。
熟知した道でも転倒や衝突には注意
毎日のように歩いている道でも、その時々で状況は変わります。雨で路面が滑りやすくなっている、大きな石が落ちている、横から自転車や子どもが突然飛び出してくるなど、予期せぬことがあっても不思議ではありません。角を曲がる時、反対方向から来た人と正面衝突するかもしれないし、特に道の左側から右方向へ曲がる時、後ろから走ってきた自転車にぶつかる恐れもあります。上下左右に意識を向けて「気づき」「発見」を楽しむというお話はしましたが、未舗装の道を歩いたり、角を曲がったり、交差点に差し掛かったりした際は、思わぬ事故に遭わないようにくれぐれも注意しましょう。「歩きスマホ」などは言語道断です。暑い季節が訪れる前の散歩に最適なこの時期、ぜひ安全には気をつけて身近な冒険を満喫してください。