東日本大震災の発生から10年。普段からの地震対策の大切さを思い知らされた出来事でしたが、時がたつにつれて意識は薄くなっていくもの。いま改めていつ起こるかわからない地震に対する備えについて考えます。
家具は転倒対策とともに収納の仕方も工夫
重い物を収納したタンスや本棚の転倒は、死亡事故にもつながりかねません。まずは地震が起こっても家具が転倒しないように十分な対策が必要です。賃貸住宅の場合は難しいかもしれませんが、可能であればL字金具やチェーンで柱や壁に家具を固定すると安心です。また、上下に重ねた家具同士も金具で固定すると良いでしょう。それができない住まいでは、ポール式の器具(突っ張り棒)を家具と天井の間に入れて固定します。その際の注意点としては、1箇所だけでなく家具の両端・2箇所を固定することと、ポールを家具の前面でなく壁に近いところに取り付けること。ただし、この方法はベニヤ板などの柔らかい天井では効果がないので注意が必要です。もともと金具では固定できないテレビや冷蔵庫などについては、耐震用の粘着マットや粘着シートを底面に設置して固定すると良いでしょう。それも前方に敷き、やや壁側に寄りかからせるような角度にすることで前方に倒れてくるのを防ぎます。なお、タンスには重い物を下のほうに収納するようにします。本棚も同様で、百科事典などは下部、文庫本などは上部に置きましょう。家具自体が転倒しなくても物が落下する危険性はあるので、上に物を置かないことも重要です。
ガラスの破損も想定し飛び散りに対応
食器棚が万一倒れると、ガラスが破損して飛び散ってしまいます。破片が人に直接当たらなくても、避難する際に踏んで怪我してしまう恐れがあるので飛散しないような対策が大切です。市販されている飛散防止のフィルムを活用し、ぜひ備えておきたいものです。また、外れて落下・転倒すれば破片が飛び散るガラス窓や浴室のガラス戸なども住まいにはあります。それらについても念のためフィルムを貼っておきましょう。窓ガラスの場合は強風で外部から飛来した障害物により破損するケースもあるので、台風などの対策にもなります。また、UVカットや遮熱効果もあるフィルムを使用すれば、住まいの快適度を高めることもできます。なお、フィルムには耐用年数があるので、すでに活用中でも定期的に貼りかえることをオススメします。
部屋の模様替えの際に家具の位置も確認
この春、気分を一新するために模様替えを考えている方は、地震対策の観点から家具の位置も見直してみてはいかがでしょう。就寝中に地震が発生することを想定すると、タンスや本棚が倒れてくる方向に寝る場所があるのは非常に危険です。また、建物が破損して屋外に出られる開口部が限られてしまった場合、家具で塞いでいる箇所が多いほど避難しにくくなります。通気のことを考えても、窓の前に家具を置くのはできるだけ避けたいところです。もちろん引越しで新居に移転する方も、ぜひ防災を意識した室内のレイアウトをご検討ください。
有事における家族間の連絡方法を決めておく
大地震が起きた際、全員が自宅にいるとは限りません。東日本大震災も日中に発生したため仕事などで外出中の人が大勢いる中、公共交通がストップし、首都圏ではいわゆる「帰宅難民」(帰宅困難者)が大量に発生。しかも、固定電話や携帯電話は通じにくくなり、家族の安否確認ができない人も少なくありませんでした。家族が離れ離れになっても連絡をとる手段として、NTTの災害用伝言ダイヤル、携帯電話会社の災害用伝言板、あるいはSNSなど複数の方法を家庭内で取り決めておきましょう。できれば、その内容を紙に記しコピーをとって全員が財布やバッグの中に入れておくか、スマートフォンのメモ機能などを利用して持ち歩くようにします。デジタルの時代とはいえ、紙で携帯しておけば、万一スマートフォンがバッテリー切れになっても確認することができます。また、自宅から避難する必要があるケースも想定し、自治体が指定している最寄りの避難場所を予め調べておき、連絡がとれない場合はそこを待ち合わせ場所にするといったことも決めておきましょう。
減災行動に向けた「共助」にも高い意識を
災害の時は、自分たちの身を守る「自助」も大切ですが、自治会・町内会などが実施する防災活動にも普段から参加し、「共助」の意識も持ちたいものです。地域に住む人々が協力して減災に取り組むことは、結果的に地域の一員である自分や家族を守ることにもつながるからです。特に、みんなで一緒に町内を歩いて、災害が起こりそうな場所や、公園・緑地など災害時に役立つ地域の資源、避難場所などを点検し、課題やより良い対策を確認すると防災の意識も高まります。もし身近でそうした活動が行われていない場合は、春の陽気の中、家族で散歩しながらチェックしてみてはいかがでしょう。