食生活の欧米化が進み、日本の食卓もすっかり肉類の豊富なメニューが当たり前となりました。その一方で、我が国の伝統食は、栄養価が優れているなどの点でむしろ海外から注目されています。今回はそんな伝統食の良さを探ってみましょう。
和食は世界が注目するユネスコの無形文化遺産
日本の伝統的な食文化である「和食」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されていることをご存知でしょうか。自然を尊ぶという日本人の気質に基づいた食に関する習わしを「和食;日本人の伝統的な食文化」と題し、2013年12月に登録が決定。それは、世界からヘルシーで栄養バランスに優れているという評価を受けている証と言えます。本来、日本人の食事は野菜、魚介、豆腐や納豆などの発酵食品といった低脂肪・低カロリーのものが多く、さらに様々な健康効果が謳われるみそ汁や緑茶も摂取するのが特長です。昭和中期まではそのような食事が多く見られましたが、平成が近づくと我が国の食卓は大きく変わっていきます。共働きや一人暮らしといったライフスタイルの多様化、身近なコンビニエンスストアやスーパーで弁当や総菜が手軽に購入できるといった環境変化から、伝統食をふんだんに使いながら家で毎日料理をするといった習慣が激減していきました。それが和食文化を衰退させることにつながったと思われます。魚介や発酵食品の摂取が減り、食卓に肉類、油脂類が増えると生活習慣病などのリスクも高まります。健康長寿を伸ばすために、私たち日本人も自分たちの国の伝統的な和文化にもう一度着目したいところです。
毎日食べても飽きないバリエーション豊かな健康食
日本の伝統食の魅力をチェックしてみましょう。まずは、栄養バランスに優れていること。それは先にご紹介したユネスコをはじめとする様々な国際機関からも評価されている点です。そのうえ主食であるご飯とおかずを交互に口に運ぶことから、たんぱく質と脂肪の過剰な摂取も防ぐ食スタイルとなっています。主食のない国ではこうはいきません。カロリーの高い肉類中心の、高脂肪・高カロリーの食生活が習慣となってしまうわけです。そういうところからも、いわゆる「一汁三菜」の和食は、健康面で理にかなったものと言えるのです。油を多く摂取する欧米型の食事に比べて低脂肪・低カロリーの食材が多いのに、毎日食べても飽きないのはなぜでしょう。それは、例えば大豆という一つの食材から、みそや豆腐、納豆、醤油など多彩なバリエーションが生まれていることが挙げられます。これは食に関する日本人の英知にほかなりません。日本には稲作に最適な自然環境があり、また四方を海に囲まれた島国だったことが幸いしていたとも言えます。その土地の気候や風土に合った食事をとる習慣が代々受け継がれ、健康的な「和食」が育まれていったのでしょう。この恵みを私たちは大切にしなくてはなりません。
それぞれに大自然がくれた健やかなヘルシー効果あり
伝統食にはそれぞれどのような特長があるのでしょうか。日本は世界有数の発酵大国で、しかも動物性ではなく大豆など植物性のものが多いことも嬉しいポイントです。発酵食品には、免疫力の向上、体内の酸化防止などの効果が期待でき、保存性が高いことも大きなメリットと言えます。そして、みそや豆腐、納豆、醤油などの主な原料である大豆は、「畑の肉」と言われるほど栄養価が高いのが魅力。9種類の必須アミノ酸を含み、低カロリーなので安心して摂取することができます。アミノ酸には、米のたんぱく質には少ないリジンやスオレニンも含まれています。つまり、ご飯とみそ汁の組み合わせでたんぱく質を効率良く摂ることができるというわけです。海藻類では、みそ汁の具に使われるワカメに、高血圧の防止や血中コレステロール値の低下、排せつ促進などの効果があると言われます。そして髪や皮膚を健やかに保つヨウ素も含まれています。昆布はミネラルが豊富で、こちらも高血圧予防に加えて骨粗しょう症対策にも効果があります。海苔も同様。カリウムは高血圧予防につながるうえ、抗酸化作用のあるカテキンも含んでいます。梅干しはどうでしょう。よく二日酔いに効くなどと言われますが、さらに胃腸の動きを整えたり疲労回復に役立ったりと体が喜ぶ効果がいろいろ挙げられます。そして、日本の伝統食を支えるのは我が国のお茶文化。緑茶に含まれるポリフェノールは、老化や動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、ガンなどのリスクを高める活性酸素の発生を抑え、カテキンやビタミン類も含んでいます。そして、ポリフェノールには血糖値を下げる効果もあるようです。このように日本の伝統食は、健康な暮らしをサポートする魅力がたっぷり。地産の新鮮な食材を使って自分の手で料理すれば、なおさら伝統食をいただく楽しみがふくらむはずです。