すっかり日が長くなり、気温や日差しに初夏を感じる季節となりました。紫外線が強くなるこの時期は肌にとって嬉しくないイメージがありますが、お日様の光は人体や精神に良い効果ももたらします。大切なのは、日差しと上手につきあうことなのです。
住まいの中にも侵入する紫外線
紫外線は春先から強くなり、5~8月はかなり高いレベルに達します。暖かくなると薄着で肌の露出が増えるので、日傘を使用したり日焼け止めを塗ったりと、紫外線対策が必要になります。特に、赤ちゃんや幼児は大人よりも皮膚が薄く、紫外線の悪影響を受けやすいので、強い日光を長時間浴びることは禁物です。装備を十分に整えるだけでなく、買い物や散歩はできるだけ日差しが強い時間帯を避けて、涼しい朝夕に出かけたいものです。しかも、紫外線に用心したいのは屋外にいる時だけとは限りません。紫外線B波は窓ガラスでブロックされますが、紫外線A波は通過するので、住まいの中でも予防は必要なのです。とはいえ、家でくつろいでいる時も日焼け止めを塗るようなことはしたくありませんよね。そこで、窓辺で紫外線の侵入をカットする工夫をおススメします。紫外線をブロックするガラスも市販されていますが、費用や設置期間を考えるとガラスの上に貼る透明のUVカットシートや、レースのUVカットカーテンのほうが楽で良いかもしれません。また、古風なすだれを用いれば、自然な風を楽しみながら日差しの侵入を防ぐことができます。
健やかな暮らしを支える日光のチカラ
もちろん太陽の光は私たちにデメリットをもたらすだけではありません。まずは規則正しい生活をサポートするという嬉しい役割があります。起床時に太陽光を浴びると、睡眠のホルモン「メラトニン」の分泌量が減るのでスッキリ目覚めることができます。さらに、視神経を介して刺激がすぐ視交叉上核へ伝達され、体内時計をリセットしてくれます。だから、雨戸を閉め切ったり、厚手のカーテンで日差しを完全に遮ったりせず、朝が訪れる気配を感じられるくらいの明るさで目が覚めるように工夫して、1日を気持ちよくスタートさせたいものです。また、日中も太陽光を浴びれば交感神経が活性化されて眠気も緩和され、仕事や勉強がはかどることが期待できます。ランチを食べて眠気を感じてきたら、ほんの数分で良いのでお日様の下でリフレッシュすると良いでしょう。さらに、昼間に光を浴びておくと、夜に分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」の合成が効果的に行われ、寝つきが良くなり睡眠の質も高まると言われています。
ビタミンDを生成し様々な病気の予防に
がんや動脈硬化、認知症、高血圧、うつ病ほかの慢性病は、ビタミンD不足が原因という説があります。紫外線を浴びると皮下でビタミンDが生成され、それらの予防になると言われます。しかも、1日20分ほどの日光浴でも効果があるとのこと。このビタミンDはガラスでブロックされてしまう紫外線B波によって生成されるので、太陽光は直接浴びる必要があります。また、日差しには体の内部まで温めてくれる温熱効果や肌の殺菌効果もあります。特に、皮膚病に関する光線療法の歴史は古く、実に古代インド・エジプト文明にまで遡ります。古代ローマの博物学者・大プリニウス(紀元23~79年)も、日光浴こそが最も優れた薬と考え、冷水浴とともに日課にしていたそうです。近代では1903年に「光医学の父」と言われるデンマークのニール・フィンセンが、皮膚の紫外線療法で第1回ノーベル医学賞を受賞しています。夏場になるとクーラーの効き過ぎによる冷え性に悩む人も少なくないと思います。冷房の効いたオフィスや家の中に閉じこもっているばかりでなく、外の空気を吸いがてらテラスなどでお日様を浴びながら短時間でも日光浴をすると良いでしょう。
メリハリのある生活スタイルで太陽を味方に
話をまとめると、紫外線が強い季節だからと言ってあまり神経質にならず、適度に日差しを浴びるようにすれば良いということです。心や体にもたらす効果を考えれば、むしろ意識して太陽光に触れることも必要と言えるでしょう。屋外と屋内で過ごす時間をバランスよく保ち、またメリハリのある1日の生活リズムを大切にして、お日様の光を楽しんでください。ただし、旅行先で長時間にわたって散策する時や、ウォーキングやランニングを習慣にしている場合などは、それなりの対策が必要になります。日焼け止めを使用する際はSPF15以上のものを選び、顔、耳、首、胸元、腕、そして短いパンツやスカートなどを着用する場合は足にも塗ります。意外とふくらはぎ側は塗り忘れがちなので注意しましょう。備えは十分だとしても連続的に日差しの中にいることは避け、木陰や屋内での休憩をはさみながら、水分もしっかり補給して初夏の光や風をお楽しみください。