大きな災害が起こるたびに、私たちは日頃からの備えや有事の際の正しい行動がいかに大切かを思い知るもの。ところが、その意識を長い歳月にわたって持ち続けたり、実行したりしている人は意外と少ないかもしれません。そこで、防災の心得を改めてお伝えしていきます。
まずは住まいにおける対策をしっかりと
いつどこで遭遇するかわからない大地震。家、学校・職場、あるいは旅行先、買い物や食事での外出先かもしれません。ここではまず、住まいにおける防災対策を考えてみます。家庭にもよりますが、日中不在でも夜から朝にかけては家族の大半が家におり、住まいで被災する可能性は少なくありません。よく行われる対策は、家具の転倒防止。突っ張り棒タイプのポールを、家具の上部と天井の間に設置して、揺れが起こっても家具が動かないようにする方法です。ただし、天井の強度が不十分な場合、効果はあまり期待できません。L型の金具で壁や床に固定するほうが強度は保てるでしょう。家具や住まいに穴を開けたくないというのであれば、突っ張り棒と粘着シートもしくはストッパーを併用すれば、転倒の可能性はかなり低下します。また、睡眠中に被災した場合、家具は倒れなくても落下してきた物で大怪我をすることは考えられます。家具の上にはガラスの人形ケース、オーディオ、花瓶などの物をできるだけ置かないようにします。ガラスも要注意です。割れると避難の妨げになるので、飛散防止フィルムを貼って破片が飛び散らからないようにします。さらに、ガラスや花瓶などが割れても室内を歩いて避難できるように、和室にもすぐ取り出せる場所にスリッパや靴を置いておくとよいでしょう。出火に対する備えも大切。消火器や消火用バケツなどを用意するほか、お風呂にはいつも水を貯めておくのも一つの方法です。
万一の事態を想定して家族会議を行う
災害が起こった時、どこに避難すればよいかご存じでしょうか。地域の避難所の場所や自宅からそこまでのルートを、家族全員で一度確認し合うことをおススメします。さらに、万一はぐれてしまった時の集合場所や連絡方法なども決めておきましょう。もちろん、家の中で一番安全な場所、非常持出袋や救急箱のある場所、消火器の使い方なども全員が把握しておく必要があります。誰が非常持出袋を取り出すのか、避難経路を確保するのか、火の始末をするのかなどの役割分担も決めておくとよいでしょう。
非常持出用のグッズを充実させる
水や食料の備蓄もお忘れなく。大災害で交通網が機能しなくなると、救援物質が届くまでそれ相当の時間がかかることがあります。最低でも3日分の水・食料は備蓄しておきたいものです。非常持出袋はリュックサックなど背負えるタイプのものを選びます。中味はペットボトル、缶詰・レトルトなどの非常食、懐中電灯付きのラジオ(携帯電話・スマートフォンに充電できる機能があるとベター)、ウェットティッシュ、旅行用の下着セット、携帯カイロ、常備薬、乳幼児がいれば紙おむつ、スリッパなどが考えられます。入れておいて何かと重宝するのは包装ラップやビニールのごみ袋。水洗いできない環境でも汚れた手や食器に巻けば衛生的に食事ができるし、冬場は体に巻けば保温効果もあります。また、携帯電話・スマートフォンにあらゆる知人の電話番号を登録している人が多いと思いますが、それらの機器を必ず持ち出せるとは限らないので、緊急連絡先などを控えたメモも持出袋の中に入れておきましょう。なお、非常用の袋ではなく、普段使っているカバンも枕元に置いて寝る習慣をつけるとよいでしょう。財布、定期入れ、メガネ、携帯電話・スマートフォン、身分証明書、手帳、筆記用具などを常に入れておけば、避難後の行動がとりやすくなります。
災害が発生したら、身を守ることが最優先
ここまでは日頃からの備えについてのお話でしたが、実際に大地震が起きたら何より自分の身を守ることが大切です。食料や生活用品が豊富にあっても、怪我をしたり命を落としたりしては元も子もありません。家の中で過ごしている時に大きな揺れを感じたら、座布団などで頭を保護しながらテーブルや机の下に隠れます。すぐに外へ出てはいけません。瓦、崩壊した壁、看板などが落下してくる可能性があるからです。揺れが確実におさまったことを確認してから避難しましょう。その前に火の始末も確実に行います。ただし、やけどをしないように落ち着いて行動しましょう。家を離れたら、地域の無線放送やラジオで情報を得るようにします。ウェブではデマや誤った情報が横行するので、公的なメディアに頼るのが一番です。もしかすると、今回お伝えしたことはすでにご存じかもしれませんが、万全な備えを実際に行っているでしょうか。そして、有事の際には本当に正しい行動がとれるでしょうか。この機会にもう一度防災に対する意識を強くお持ちいただければと思います。