熱中症は家の中でも発症することをご存知でしょうか。外出する時は、帽子をかぶったり日傘をさしたりといった対策が思い浮かびますが、いったい家ではどのようにすれば熱中症を防げるのでしょうか。そこで、いろいろな観点から住まいの中の熱中症対策を考えてみたいと思います。
いつでもどこでも誰もがかかる熱中症
まずは熱中症のメカニズムについて解説します。人の体は、汗をかいたりすることで体温を下げますが、外気の温度が皮膚の温度より高かったり、湿度がとても高いと、熱を外へ出すことができなくなって熱中症を引き起こすのです。症状としては「暑気あたり」や「熱けいれん」と言われる軽度のものから、頭痛や吐き気をもよおす「熱疲労」、さらには意識がなくなってしまう重症の「熱射病」までさまざまです。
参考までに、いわゆる「日射病」と言われるものも、同じく重症の熱中症です。太陽光が原因となるものを指しますが、もしかするとそれが熱中症そのものととらえてしまうため、「熱中症は外出中に起きるもの」と勘違いする人が少なくないのかもしれません。
熱中症の大きな特徴は、いつでもどこでも誰でもかかる可能性があるということです。特に、春から夏への季節の変わり目、梅雨明け、さらに休み明けなど、体がなかなか気候の変化についていけない時期は要注意です。暑さに慣れることができず、熱中症にかかってしまうのです。
暑い日に室内で過ごす時のポイント
ポイント1
住まいでの熱中症対策の第一歩は、気温や湿度を意識すること。
お出かけする日なら、その日の最高気温や熱中症指数などを天気予報でチェックしますよね。実は、家の中で過ごす時もそれは大切なのです。気温や湿度の状況を確認して、「自分はいまどういう環境にいるのか」を知ると、体調のことにも敏感になります。そして、カーテンなどで直射日光が室内に入らないようにしたり、風通しを良くしたり、空調で室温を適正に保ったりすることで、「熱中症になりにくい環境」を自分自身でつくればよいのです。
ポイント2
衣服の工夫
麻や綿などの通気性のよい生地を選び、下着も吸水性や速乾性にすぐれた素材のものにするのがベターです。
ポイント3
冷蔵庫でひやしておいてクールダウンできるグッズの活用
冷却シートや冷却スカーフ、氷枕などさまざまな冷却グッズが市販されていますから、それらも上手に使いたいものです。コツとしては、太い血管が皮膚の近くを通っている首元などを冷やすと、とても効率的です。寝苦しい熱帯夜などは、こうしたグッズをうまく活かして睡眠をしっかりとれば、熱中症に負けない体力の維持にもつながります。
家でも水や塩分はしっかりとる
屋外では「水分をとろう」という意識が高まりますが、もちろん水分補給は家にいてもしっかりと行いたいものです。たとえ喉が渇いていなくても、こまめに水分をとる習慣をつけると良いでしょう。とはいえ、頻繁にキッチンなどに足を運んで水を飲むのは何かと面倒に感じるでしょうから、ペットボトルのドリンクをいつもそばに置いておきます。特に、適度な塩分や糖分を含んだスポーツドリンクなら、汗で失われた水分や塩分をスムーズに補給できるので重宝します。
また、毎日の食事でも、ほかの季節より多少は塩分を多くとることを心掛けましょう。ただし、塩分を制限されている方は、暑い季節の食事についてお医者様によく相談してみてください。
「3つの基本」で体力をつける
熱中症は、気温や湿度など外的な要因から発症することが多いですが、もちろん自分自身も体力をつけて、暑さを吹き飛ばすくらいの健やかな状態にしておくことが大切です。それを実現するための心構えとしては、「適度な運動」「適切な食事」「十分な睡眠」の3つを守ること。ハードな運動をする必要はありませんが、夏場もウォーキングなどを行い、栄養バランスのとれた食事を3食しっかりとり、先にご紹介したような熱帯夜対策で睡眠も十分にとる。これが、熱中症に打ち勝つ、勝利の方程式です。
それでも熱中症になってしまったら、応急処置の基本もやはり3つです。
基本1
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まずは、しっかりと休息をとること。衣服をゆるめて安静にします。
基本2
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体を冷却すること。風通しのよい部屋、あるいはクーラーの効いた部屋など、できるだけ涼しい場所で休みましょう。そして、冷却グッズで体を直接冷やします。わきの下、首の回り、足の付け根などに氷嚢や氷塊などを当てて、血液の循環を良くし、なるべく早めにクールダウンするようにします。
基本3
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何と言っても水分補給。やはりお勧めはスポーツドリンクです。失った水分や塩分をとって、元気を取り戻します。ただし、意識障害や吐き気があるなど重症の場合は早めに病院へ行って診てもらいましょう。夏バテや軽い暑気あたりだと侮らずに、しっかりと自分の状態と向き合って対処することを心掛けてください。